ダイナミックダンパーによる振動減少
ダイナミック ダンパーとは
ダイナミックダンパー(TMD : Tuned Mass Damper)は、バネと重さで構成された振り子で、
固有の共振周波数があります。
これを取り付けておくと、その物に外から振動が加わったとき、
ダイナミックダンパーの共振と同じ振動周波数であれば、
外からの振動力とダイナミックダンパーが押し返す力とが
打ち消しあい、揺れがなくなるという現象を利用した制振方法です。
貼るだけで性能向上する商品
オーディオ用で、不要な音を吸収するという商品がありますが、
これは接着テープがバネとして作用し、チップがおもりとなって
ダイナミックダンパーとして機能すると思います。
ダイナミックダンパーを、筐体に取り付けると、ダイナミックダンパーの
共振する周波数において(のみ)、筐体を振動と逆方向に押し引きするため、
筐体の振動を抑えることができ、筐体の質量が格段に大きくなったような、
あるいは剛性が高くなったような結果が得られます。
ただし、同調する周波数のみに対してしかその効果はなく、
それ以下では、ただの重しとして、それ以上では、そこに無いものとして作用します。
減衰のない純粋なバネで作ると、共振ピークが鋭く振動抑制の度合いも-20dB(1/100)以上にもなり
大きいのですが、ゴムや粘着テープのように減衰が高いと、共振の帯域が多少ブロードに
なる代わりにピーク抑制性能が-6dB(1/4)くらいに下がります。
それでも、重さや剛性を4倍にすることがいかに難しいかを思えば、-6dBという値は十分大きな効果です。
このように、周波数帯域さえ特定できれば、質量や剛性を上げることに対して振動吸収の効果が大きく、
安いので、精密機械や自動車ではよく使われる部品なのですが、鉛やブチルゴムと違って周波数同調が必要なため汎用の制振商品とはなりにくいのです。
その点で、問題の振動数に共鳴させるというのではなく、ユーザーに効果の出る場所を探させるという
やり方は、すばらしい逆転の発想だと思います。
価格の法外な高さはそのアイデアに対する対価とも言えなくないでしょうか。
基本的には錘ですので、硬く、密度の高いもの、つまり金属がダイナミックダンパーの錘
に向いていると思います。
しかし、筐体の振動を止める一方で、ダイナミックダンパー自体は激しく振動し、新たな振動源と
なりますので、その材質の鳴きは音質に影響を与えると思います。密度が大きいことは同じ重さでも
表面積の小さいことであり、金属はその点で有利ですが、内部損失が小さく鳴きが大きい点には注意が
必要でしょう。機械部品のダイナミックダンパーには、遮音の意味でもケースに収めたものが多いです。
ちなみに、コインに粘着テープを貼ったよくある制振商品の形状では、
粘着テープがせん断方向にずれる平行スライド方向が一番低い共振周波数で、
シーソー状、ツイスト状、と続き、
貼り付け面に垂直な上下方向の振動はこれらより高い周波数となります。
したがって、一番揺れている面の振動の腹にあたる場所につければよいと
いうものではないと言えます。
もう少し大きな金属板でできた部品を貼るだけで、車体の剛性をあげたり、
エンジンのパワーを引きあげるという
商品がありますが、これもダイナミックダンパーとしての作用だと思っています。
「特定周波数に限って」言えば、同じ変位を与えるための力=剛性が、実際に
論理的にあがるわけで、剛性不足だと感じさせたブルブルした振動がなくなって
カチンとした感じへ変われば、剛性UPとして感じるわけです。
この種の剛性補強は、車両の通行による橋の揺れ変形を止めたりするために使用されています。
また、振動が消えれば機械の動きが鮮烈に感じられるようになりますから、
エンジンパワーが上がった時と同じような印象が現れるかも知れません。
クライオ処理による原子のなんとかだとか、イオンとか電磁波とかの放出とか、
そういうのは、商品に見合う価格を維持するのに必要な付加的な情報だと思います。
ダイナミックダンパーのポイント
- 共振周波数付近でのみ、制振効果を発揮する。
したがって外部振動周波数を想定して設計する必要があります。周波数を特定できない振動では、性能を発揮できません。
- 既存部品を、重りとして使う。
-
重量増加が性能にあまり影響の無い「固定の」装置、いわゆる設備では、専用の「重り」部品
をわざわざ取り付けることもありますが、オーディオはともかく車のように運動する装置では
わざわざ、重量をあげる部品を取り付けると、運動性能低下につながります。
そこで、既にある部品を、錘として使わないと重量やスペースが無駄になります。
最近の車のたぶん全車が、ラジエターをダイナミックダンパーとして利用しています。
この他に使えるものがないかと、重量があって取付けに剛性が必要で無い部品を探して見ると、
バッテリーをダイナミックダンパーにする
まずは、バッテリーが簡単そうです。
バッテリーの台座と押さえの両方に、スポンジゴムを挿んで取り付けます。
ゴムの厚みと断面積で、共振数を設計するべきですが、とりあえず今回は適当につけました。
バッテリーを押してみると意外にしっかりしていますが、叩くとブルルンッと震えます。
エンジンをかけてみると、アイドリングでブルブル震えています。
運転席に戻ると、ちょっとはきいてるのかなぁという感じ。
まあとりあえず試乗にいこうと走り出したら、これがびっくり。
なんと、これまで嫌だったファーストギアでのピッチングが激減しています。
ブレーキ時のノーズダイブでもなんか剛性感があがった感じです。
エンジンノイズを減らそうと思ってたけど、たしかに、車体の揺れも振動の一種にはちがいない。
こっちの方が、御利益あるので、このまま使うことにします。
バッテリーの台座として、マット状に底面一杯の面積のゴムを使う場合は、そうとうフニャフニャした材質か、
それなりの厚み(30mmとか)にしないと、共振周波数が高くなりすぎます。
手で叩いて、「ブンッ」とか「ボンッ」とかいうようでは高すぎです。
手で叩いて、「ホロロッ」とか「フルルッ」とかいう感じでないとダメです。
次は、スペアタイヤでトライします。
スペアタイヤをダイナミックダンパーにする
スペアタイヤは、フェルトの敷物の上からボルトどめされていました。
バッテリーと同様にスポンジゴム切れをタイヤの下、ボルト座において固定してみました。
試乗すると、路面凹凸に対して突き上げがひどくなっていました。これは全くの失敗です。
原因として、共振数が低くなりすぎ突き上げに対してタイヤが宙に浮いた状態となり、ボデイの揺れを押さえる力がほとんどなくなったと思われます。
ゴム面積を増やし、厚みを薄くしてバネを固くする対策をしました。
すると、路面凹凸に対して突き上げが減り、以前と同じくらいになりました。
はたしてこれは成功しているのか、効果なしなの判断できません。でも、スペアタイア外すのは作業が大変なので、このまま様子をみることにします。
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